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理系クンの囲碁入門

はじめに

(吉岡)

囲碁というと皆さん、どんなイメージをお持ちでしょうか。まわりの方のお話を聞くと、「難しい」という印象をお持ちの方が多いようです。さらに聞くと、途中で挫折した人も結構います。「死活」でわからなくなったとか。本だけ読んで対局したら惨敗したとか。しかし、実は「ルール」はとても単純なゲームです。その反面、奥が果てしなく深い。しかも論理的で、かつ感覚的。長い歴史を経て、これ以上ないほど洗練されたゲームデザインと、未知の奥深さと、拡がりがあります。

僕自身は、1年ほど前に囲碁を習い始めました。なかなか進歩しませんが、それでも最初から感じた事があります。それは、「これはプログラミングと良く似ている!」という感覚です。プログラミングそのものと似ている、というより、その習得過程で感じる感覚がとても良く似ているのです。たとえば、再帰呼び出しで、コードがエレガントになることが腑に落ちた時 (≠知った時)、感動しませんでしたか? 囲碁を学ぶ事は、この感覚の連続です。

で、確信しました。囲碁は理系に向いている!

世の中を見渡すと、その例が結構あります。特に欧米の囲碁プレイヤーは、理系の人が多いそうです。ゲーム業界とかかわりの深い方では、かのビル・ゲイツ氏、伝説のPONGを開発し、アタリ社を創立したノーラン・ブッシュネル氏、Uncharted 2を開発したNaughty Dogsのマーク・サーニー氏など。

で、思いました。日本のゲーム業界で働いていて、バリバリの理系で、囲碁をやったことのない人に、プロが教えたらどうなるんだろう?

そこで今回、「CEDEC CHALLENGE: 超速碁九路盤AI対決」(ちょうはやご きゅうろばん AI たいけつ) でご協力頂くプロ棋士の万波佳奈先生と、囲碁インストラクターの王真有子先生にお願いして、特別囲碁教室を開催して頂きました。

生徒は、日本のゲーム業界におけるミスターAIこと、フロム・ソフトウェアの三宅陽一郎さん。AIと言えば三宅さん、三宅さんといえばAIとして有名な方です。ボードゲームを通して、ゲームデザイン技術を進化させる試みにも挑戦されています。
ついでに、数学専攻で固有値を極めた朝倉順子さん、MITからサマーインターンに来ているJohn Marreroさんにも生徒として加わってもらっての教室となりました。

この様子を皆さんにお伝えする狙いは、数千年の歴史を持つ囲碁というゲーム自体について少しでもご理解いただき、CEDEC 2010で行われる「CEDEC CHALLENGE: 超速碁九路盤AI対決」をよりお楽しみ頂くためでもあり、日本が洗練させ、世界に広めたゲームデザインの一例に改めて触れて頂く事でもあります。

それでは、はじまりです。この後は、王先生と吉岡が役割分担しながら書きました。囲碁について専門的なところは通常書体で王先生、罫囲み部分は吉岡による文章です。

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